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2024.04.02

犬の肩関節不安定症について|愛犬の歩行異常を見逃さないで!

肩関節不安定症は、肩の関節が本来の位置から外れやすくなる状態を指します。これは、生まれつき肩関節の形が不完全である場合や、滑りやすい床での生活が原因で肩関節の軽い慢性外傷などが原因です

この状態になると、肩が正しく動かなくなり、痛みや不快感を引き起こし、最終的には運動障害に繋がる可能性があります。

この病気は、どの犬種にも起こり得ますが、トイ犬種のような小型犬に特に多い傾向があります。

 

この記事では犬の肩関節不安定症の原因や症状、診断・治療方法などを詳しく解説します。

 

 

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

 

原因


肩関節不安定症は、犬の肩の関節を支える重要な靭帯や筋腱が、慢性的な軽い炎症により損傷を受けることで、肩関節が不安定になる病気です。

この不安定性は、肩関節の内部構造が生まれつき未発達であるために起こりやすく、ちょっとした負荷で肩が外れやすくなり、肩を動かす角度が通常よりも大きくなることがあります。

 

生まれつき肩関節の構造が未発達となる原因は不明ですが、トイ・プードルなどの小型犬で発生が多いことから遺伝的な要因が発症に関わっている可能性があります。

しかし、コーギーなどの中型犬種、ラブラドールやバーニーズなどの大型犬種にも発生が確認されているため、どの犬種にも起こり得る病気です。

 

他にも、外傷、過度の運動で慢性的に肩関節を痛める、肥満による関節への過剰な負担などが原因として挙げられます。

 

 

症状


肩関節不安定症の最も一般的な症状は跛行(歩行の異常)です。

痛みを避けるために前足を地面から持ち上げたまま歩くことがあります。また、立ち止まるときに前足を浮かせている、歩くときに頭が上下に動く転頭運動などの様子が見られます。

 

さらに病状が進行し、肩関節が脱臼したり、変形性関節症が併発したりすると、関節の痛みはより一層強くなります。

これにより、歩行が困難になり、前足に触れられるのを極端に嫌がるような行動が見られることがあります。

 

診断方法


肩関節不安定症の診断は主に身体検査(視診と触診)とレントゲン検査で行います。

まず視診では歩行の様子転頭運動の有無、触診では肩関節に触れたときに痛がる様子がないか、肩関節の動きの範囲、肩関節の脱臼の有無などを慎重に確認します。

 

次に、レントゲン検査によって肩関節の構造や、周囲の炎症状態が評価されます。

レントゲン検査では身体検査ではわからない肩の骨の形状や、変形性関節症などを確認できるため、肩関節不安定症の診断に欠かせない検査です。

 

さらに、関節鏡検査という関節内部に入るほど非常に細い内視鏡を挿入して、直接的に肩関節の状態や関節炎の有無を調べる検査もあります。関節鏡のメリットは診断と同時に治療を行うことも可能な点です。

また、歩行異常や前肢の持ち上げといった症状は、多発性筋炎や骨肉腫など他の疾患でも見られるため、鑑別疾患としても重要です。

 

*関節鏡検査とは、関節に入るほど細い内視鏡を挿入して直接的に関節の状態や、関節の炎症の有無などを調べる検査です。

 

 

治療方法


肩関節不安定症の治療には、内科治療外科治療の二つのアプローチがあります。

内科治療では、関節の炎症を抑え、痛みを和らげるために鎮痛剤や炎症を抑えるサプリメントが用いられます。これにより、肩関節周辺の炎症を緩和し、関節の安定性を保つことを目指します。

 

当院では鍼治療も行っております

極細の鍼を使い、痛みを感じることなく関節周囲の筋肉に刺激を与えることで、筋肉のこりや血流を改善し、症状の緩和を図ります

また筋肉をつけることも重要であり、バランスの良い食事と、関節に負担をかけない程度の運動を継続することも大切です。

 

一方、先天的な関節構造の異常が原因の場合や、内科治療だけでは十分な効果が得られない場合には、外科手術による関節固定が検討されます。

ただし、外科手術は治療の最終手段と考えられており、実際に手術が必要となるケースは比較的稀です。

 

当院は、犬の負担を最小限に抑える内科的治療による完治を目指しています

肩関節不安定症を抱える愛犬がいる場合は、様々な治療オプションを検討し、最適な治療計画を立てることが重要です。

 

 

予防法とご家庭で注意すること


滑りやすいフローリングの上に滑り止めのマットを敷くことで、肩関節にかかる負担を減らし、肩関節の炎症の予防に繋がります。

このような生活環境の工夫は比較的簡単に実施でき、愛犬の安全を確保するために非常に有効です。

 

また、愛犬の歩行パターンや行動に注意を払い、普段と異なる様子や痛みのサインが見られた場合は、早期に動物病院での診察を受けましょう。

 

まとめ


肩関節不安定症は、主に前足の歩行異常や、痛みが生じることが主な特徴です。この症状は、関節の慢性的な炎症や、生まれつきの関節構造の異常によって引き起こされます。愛犬の健康と快適な生活を守るためには、早期に正しい診断を受け、適切な治療を始めることが重要です。

 

多くの場合、内科治療や環境の調整により、手術をすることなく治療できるケースも多いので、愛犬の歩き方などに違和感がある場合や、いつもと違う様子に気づいた場合は、すぐに当院にご相談ください。

 

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