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2024.03.22

犬の上腕二頭筋腱炎について|運動量の多い中〜大型犬は要注意!

上腕二頭筋腱炎は、犬の肩の周りにある上腕二頭筋腱に炎症が生じる病状を指します。
上腕二頭筋は前肢の運動に重要な役割を果たしており、肩甲骨から肘にかけて伸びています。
この筋肉と腱は犬が走ったりジャンプしたりする際に、肩の動きをスムーズにし、肘の曲げ伸ばしをサポートすることで、日々の活動を支えています。
特に、活動的な中〜大型の成犬や、老犬にこの病気が見られます

この記事では犬の上腕二頭筋腱炎についての原因や症状、診断・治療方法などを詳しく解説します。

 



■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

 

原因


犬の上腕二頭筋腱炎はドッグスポーツなどを行う活発な中〜大型の成犬や老犬に発症することが多く、室内で飼育されている小型犬での発生は稀です。
犬の上腕二頭筋腱炎の原因は以下のように、さまざまな理由が考えられます。

・外傷による捻挫や腱の部分断裂
・床が滑りやすいことなどによる慢性的な負荷
・過度な運動
・前足の過伸展(前足を正常以上に伸ばすこと)
・関節炎などに起因した関節内の小さな骨片による物理的刺激
・過体重により上腕二頭筋腱への負担が大きい


しかし通常の診察では、多くの症例が来院時には数ヶ月〜数年の長期の慢性経過を取っていることが多く、上腕二頭筋腱炎の正確な原因を特定することは困難であることがほとんどです。

 

症状


犬の上腕二頭筋腱炎の主な症状は前足に痛みを感じることが多く、以下の様子が見られます。

・前足を引きずり、足を上げて歩くような歩行異常(=前足の跛行)
・散歩に行きたがらない
・長時間歩けない
・前足に触れられることを嫌がる

 

 

診断方法


犬の上腕二頭筋腱炎の診断に実施される主な検査は、身体検査(触診・歩様検査)、レントゲン検査、関節鏡検査、腱のエコー検査、MRIなどがあります。
特に画像診断技術は、腱や周囲の組織の状態を詳しく調べ、他の可能性のある原因(例えば骨折や腫瘍)を排除するのに役立ちます

当院では、関節内部や周囲の構造を直接的に評価できる関節鏡検査を実施しており、より正確な診断が可能となっています。
重要な鑑別疾患としては、上腕骨の腫瘍、腋窩神経腫瘍、肘関節異形成、肩関節炎、肩関節不安定症などがあります。

*関節鏡検査とは、関節に入るほど細い内視鏡を挿入して直接的に関節の状態や関節炎の有無などを調べる検査です。

 

治療方法


犬の上腕二頭筋腱炎は症状の重さによって異なり、主に治療法は内科治療外科治療の二つに分けられます。
初期の軽い症状では、安静に保ち、運動を控えさせることから始めます。この段階で非ステロイド系の消炎鎮痛剤を用いることで、炎症を抑え、痛みを和らげます

しかし、症状が重い場合や、症状が繰り返し現れる場合には、外科治療を選択することがあります。
関節鏡手術はその一つで、内視鏡を用いて肩関節内の状態を直接観察し、痛めた腱の切断処置を行います。この手術は体への負担が少なく、回復も早いことが特徴です。
手術後は、腱の断端が自然に上腕骨に再固定され、ほとんどの場合、日常生活における動作に支障を来すことはありません。

当院では外科治療を早期に施すことで、術後の回復は良好であることが多いため、この方法を推奨しています。手術後は丁寧にリハビリを行い、動きを徐々に回復させることが大切です。
愛犬が健やかな毎日を取り戻せるよう、全力でサポートしていきます。

 

予防法やご家庭での注意点


回復のためには、適切な休息と運動制限を確保することが重要です。急激な運動やジャンプは避け、散歩は短くゆっくりとしたものにしてください。
またリハビリや家でできる軽いストレッチは、回復を促し、将来的な怪我の予防にもつながります。

上腕二頭筋腱炎を予防するためには、激しい運動を避けること、家の中での滑りを防ぐためにマットや絨毯を敷くなどの対策が有効です。しかし、これらの予防策をすべて実践しても、病気を完全に防ぐことは難しいこともあります。
そのため、愛犬の歩行パターンや振る舞いを日々注意深く観察し、いつもと異なる様子や痛みを示すサインがあれば、すぐに動物病院を受診しましょう。

 

まとめ


前足の跛行を診断することは、後足の跛行に比べて一層の注意と専門的な知識を必要とします。特に、上腕二頭筋腱炎をはじめとする前足の疾患は、レントゲン撮影だけでは診断が難しい場合があります。このような状況を踏まえ、当院では患部の丁寧な触診や、必要に応じて関節鏡を使用した詳細な診断を心がけています

上腕二頭筋腱炎のように、特有の明確な症状が現れにくい疾患に対しては、獣医師の豊富な経験と洞察力が特に求められます。後足の疾患、例えば膝蓋骨脱臼や前十字靭帯断裂などは比較的よく知られていますが、前足の跛行を引き起こす疾患は起こりにくく、特に整形外科的な疾患については、専門的な診断が必要とされるため、その知識と技術を有する病院での診察が不可欠です。

もし愛犬の歩行に何らかの違和感があれば、整形外科的な問題に対応できる専門の知識を持つ当院にぜひご相談ください。愛犬の健康を守るために、私たちは細心の注意を払って診察を行い、最適な治療法を提案いたします。

 

 

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