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2024.04.22

犬の多発性筋炎(免疫介在性)について|筋肉が炎症を起こす

犬の多発性筋炎とは、何らかの原因で全身の筋肉に炎症が発生し、痛みが伴い正常な動作が困難になる病気です。

特にボクサー、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ニューファンドランドなどの大型犬の成犬に多く見られますが、小型犬でも加齢とともに発症することがあるため全ての犬種で注意が必要です。

 

今回は犬の多発性筋炎の原因や症状、診断・治療方法などを詳しく解説します。

 

 

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法とご家庭で注意すること
6.まとめ

 

原因


犬の多発性筋炎の正確な原因はまだ解明されていませんが、その多くが免疫介在性の反応によって引き起こされると考えられています。これは、免疫細胞が誤って自身の体の筋肉組織を攻撃することで炎症が発生する状態です。

 

さらに、胸腺腫やリンパ腫などの腫瘍性疾患や、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスなどがきっかけとなって二次性に多発性筋炎が引き起こされることがあります。

 

症状


多発性筋炎による筋肉の痛みは全ての症例で生じるわけではありませんが、一般的には、全身の多くの筋群に痛みが現れることが主な症状です。
この症状は初期段階で以下のような特徴があります。

 

強直性歩行木馬のようなぎこちなく固い歩き方をします。
左前肢から右前肢へと、痛みを感じる足が変わることがあります。
発熱
全身性の筋萎縮使用していない筋肉が次第に弱まり、小さくなっていきます。

 

これらの症状は特に運動後に顕著に見られることが多くあります。
治療を受けずに放置すると、症状は次のように進行していきます。

 

巨大食道症:食道が拡大し、飲み込むことが困難になる状態です。
嚥下困難や流涎:飲み込みに難しさを感じ、常によだれが垂れるようになります。
発声障害
自立歩行不可能:最終的には、自分で起き上がれなくなります。

 

診断方法


多発性筋炎の診断には複数の検査が必要ですが、似た症状を示す他の疾患との鑑別が特に重要で、診断は以下のように進められます。

 

問診犬の持病や症状の経緯を詳しく聞き取り、特徴的な臨床症状を把握します。
身体検査骨折や脱臼など、筋肉の症状と似た外傷がないかを確認します。
神経学的検査脳や脊髄など中枢神経系の異常が関与していないかを調べます。
血液検査CK(クレアチンキナーゼ)やAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)のレベルを測定し、筋肉の損傷を示す指標とします。
筋電図検査:筋肉に細い電極針を刺して、筋肉の電気的活動状態を調べる検査です。*筋電図検査は動物病院によっては実施できない場合があります。
筋生検:筋組織の一部を採取し、顕微鏡でその状態を詳細に観察することで、病理学的に診断を下します。

 

また、多発性筋炎と類似した症状を示す疾患(脱臼、上腕二頭筋腱炎、全身性エリテマトーデス、多発性関節炎、重症筋無力症、髄膜炎など)との鑑別を行うために、以下の検査が追加で必要になることがあります。

 

抗核抗体の測定:自己免疫疾患の可能性を評価します。
血清学的検査:特定の抗体や炎症マーカーの存在を確認します。
アセチルコリン受容体抗体の測定:重症筋無力症の診断に用いられます。
髄液検査:中枢神経系の疾患を除外するために行います。

 

治療方法


多発性筋炎は自己免疫の関与が大きいため、ステロイドを用いた免疫抑制療法が基本となります。もちろんステロイドには副作用があるので、ステロイド以外のその他の薬を上手く組み合わせて治療を行う必要があり、薬の選び方と内科療法をいち早く始められるようにすることがとても重要です。

 

基本的に免疫抑制剤を用いた内科療法が効果的であり、特に合併症が発生していない場合の予後は良好です。具体的には、巨大食道症や嚥下困難が引き起こす誤嚥性肺炎などの重篤な合併症がなければ、治療による改善が期待できます。]

 

予防法とご家庭で注意すること


犬の多発性筋炎の有効な予防法はないため、愛犬の歩き方や普段の様子に違和感がある場合は、すぐに動物病院を受診することが大切です。

 

多発性筋炎自体は通常、命に直接関わるような病気ではありませんが、巨大食道症を呈した場合には、吐出により誤嚥性肺炎という重篤な合併症を引き起こす可能性があります。誤嚥性肺炎は致命的になることもあるため、初期の異変を見逃さず、速やかに適切な治療を受けることが命を守る鍵となります。

 

まとめ


多発性筋炎は主に自己免疫性の反応によって引き起こされ、四肢を含む全身の筋肉に炎症が生じる病気です。治療としては、ステロイドを用いた免疫抑制療法が効果的で、これにより多くのケースで良好な予後が期待できます。

 

しかし、誤嚥性肺炎といった重篤な合併症が発生すると生命の危険が伴うこともあります。そのため、異常を感じたらすぐに診断と治療を受けることが非常に重要です。

 

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